勿来の佐川荘

昔、ぼくがまだ子供だった頃。

ぼくの誕生日に近い日は、いつもここに泊まっていた。

勿来とは福島県にある場所で、佐川荘とは佐川急便の保養施設である。

そこは海がほぼ目の前にあった。

部屋の中のテレビはいつもポケモンの映画がやっていて、毎年毎年ミュウツーとかルギアとかを見ていた。

別館なのか本館なのか記憶は怪しいが、大きなプールがあって、暇だったらもうプールで泳いで来いみたいな、そんな場所。

誕生日が近いから、どこかの1日の夜食にはケーキがついてきていた。

その頃が楽しかったかどうかはあまり記憶がない。

覚えているのは、ベランダから外を見ていたらツバメに襲われたことと、行き帰りに聞いたドラクエ8のオーケストラ版のCDのこと。

こういう思い出がありながら、今のぼくは誕生日を祝われることが大嫌いに育ったので、ぼくの誕生日なんか祝わなくて良いといつもいつも言っている。

まあそれはいつかまた呪詛として吐き出すだろうとして。

できれば記憶が鮮明なうちに訪れたい場所のひとつではあったのだけれど、それはもう叶わない。

福島、沿岸部と聞いて想像に易いだろう。

 

 

そこはもう、東日本大震災の影響で存在していないのだ。